猿蟹合戦

11/15
前へ
/15ページ
次へ
村にたどり着いたものの、蟹の家がどこだか分からない。 ちょっとそこらの住人に聞いてみようか。 「すいません、蟹さんの家はどちらに───」 「!…お前はっ!!」 「ッ!?」 いきなり、殴られた。 左の頬に強烈な痛みが走る。 「今さら蟹さんに何の用だ!」 騒ぎを聞きつけ、住民が集まって来る。 「蟹さんの仇だっ!」 「痛っ!」 住民たちが、次々に石を投げつけてくる。 そうだった。俺はここの住民に嫌われているんだった───おかしな話だが、蟹の家を見つけるのに夢中で、すっかり忘れていた。 「何をしに来た!帰れ!!」 「……嫌だ。」 石が俺に当たる。苦痛に顔を歪めながらも、俺は足を止めない。 「お前自分が何をしたのか分かっているのか!?」 「分かってるさ……それでも行かなくちゃ行けないんだ…!」 小さい子供までもが石を投げつける。 時折かなり大きな石も飛んでくる。体の至るところから血が滲む。 それでも俺は歩く。ただひたすら、蟹の家を目指して。 「……勝手にするがいい。たどり着いた所で、あの家には既に───」 さすがに疲れたのか、住民たちの攻撃が止む。 目の前には、蟹の家があった。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加