猿蟹合戦

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「えっ?」 その蟹は、少し戸惑ったような様子を見せた。 当たり前だ。いきなり来た見知らぬ誰かに、自分の物を渡せる訳が無い。 でも俺は諦めなかった。 「じゃあ、この柿の種と交換してくれませんか。」 我ながら馬鹿げた提案だった。こんなどこで拾ったかわからない柿の種と、その大きなおにぎりを交換してくれるとは、到底思えなかった。 しかし、 「……いいですよ、交換しましょう。」 そう言って、蟹はあっさり承諾してくれた。 俺は柿の種を渡し、すぐさまおにぎりに貪りついた。 無我夢中でおにぎりにかじりつき、あっという間に完食した。 よかった!生きてる! 生き長らえた感動が、大きな波となって込み上げてくる。生きていることの感動を、奇跡を、今初めて実感した。 「ありがとう!!蟹さ…」 お礼を言おうと思ったが、命の恩人は、もうそこにはいなかった。
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