空気銃

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あのまま残して行ってしまえば帰って来た時にはもう誰かが持ち去ってしまっているだろう事は、容易に想像出来る。しかし雀を両手で持っているため取りに戻ったところで持つ事は出来ない。 エアガンを見て、もう一度聡は手の中の雀に視線を向ける。 (家に持って帰ってからでも、遅く無いじゃろ) 近くにあったベンチにゆっくりと雀を下ろし、聡はエアガンのもとへ駆け寄った。拾い上げたエアガンを持つと、一目散に家へと踵を返す。再び入口に差し掛かった所で、微かな羽音と猫の鳴き声がした。 聡が慌てて振り向くと、確かに置いた筈のベンチに雀の姿は無く、そこには数枚の羽根が散らばっているだけである。 脳裏にバタバタと暴れる雀とそれをくわえ去る猫が鮮明に映しだされ、聡は大事に抱えていたエアガンが急に忌ま忌ましい物に感じられて、地面に叩きつけて家まで振り返らずに走って帰った。 叩きつけられたエアガンは、辺りに細かい破片を撒き散らして少し原型を崩している。 数瞬後、正午を告げるサイレンが響き渡り、さわさわと風が吹いて羽根は音も無くどこかへと飛ばされていった。 了
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