コメカミに

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そもそもなぜ銀行を襲ったのか?答えは「何となく。」別に金が欲しかった訳ではない。私は最初から死にたかったから。ならば人様に迷惑をかけず自害するべきだとの意見もあるが、私は死ねない生き物なのだ。 なんの因果か守護か、或いは神の悪戯か。私は自ら死に追いやっても助かってしまう運命にあった。 薬を大量に飲んでも、手首を切っても絶命は免れ、飛び降りようとも邪魔が入り、車に跳ねられようと道路に飛び出すも、鼻先1㎝手前で車が止まれたり。 とにかく私の死はことごとく阻まれていた。 さぁ、しかしそろそろいい頃合だ。 頭の中では既に無数の銃弾を存分に撃ち込まれた私がいた。至福。 失神した母親をたたき起こし入り口まで連れて行った。 すると、煙のように周囲を暗躍していた警官隊に一斉に緊張が走り、一瞬にして私はあらゆる方向から銃口を向けられた。サイレンもなく、ただ真っ白な照明と赤色灯がうるさく瞬いていた。 だれのともなくゆっくりと深呼吸ににた呼吸が聞こえた。私だったか、女だったか、警官隊だったか、或いはその場にいた全ての人間だったか。 乾いた夜の空気に私の声は響いた。 「この女を今から殺す。」 ガチャガチャと改めて私に照準を合わせようとする警官隊の武装音が響いた。 人質とは、本来脇に抱えて盾のようにするのが普通だが、それだと警察としては私を撃ちづらい。なので彼女には私の足元に仰向けで寝るように命じた。 左手に斧。 私は彼女の首の真上に構えた。 「いいか警察よく聞け。私はこれから5秒のカウントダウンをする。カウントが終わり次第彼女を殺す。助けたければ私を上手く射殺しろ。」
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