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2㎝。
突然、全てが停止したかと思うと目の前に二人の男が立っていた。
「シェリス。一体どういうつもりだい?」
若く美しい金髪の男は、もう一方の50代程の男を見ながら怒りを露わにした。
「ルトよ。人間はお前の快楽の為に主が創ったモノではない。」
私の身体は視覚と聴覚以外は相変わらず動かず、いや、世界そのものがその二人以外明らかに停止していた。
「あれ?シェリス。その男どうやら覚醒種だ。我々が見えている。」
ルトと呼ばれていた男はそう言うと、10メートル程離れた場所から一瞬で目の前に立った。
「珍しいね。生来の覚醒種では無かったのに変異型かな?」
私は何が起こったのか把握しかねた、しかし、人ならざる者がこの世に在ることを認識した。
少しばかりの安堵は、多分、状況は分からないがどうやらまだ死ぬ事はないからだと悟る。死をあんなにも望んだ私なのに実際は恐怖でしかなかったようだ。
黒ずくめのシェリスと呼ばれた男も近づいてきた。
「シェリス。君、まさか助けるつもり?」
「お前のやり方は運命のそれではない。ただの陽動だ。我々は強制的にこの力を使うべきでは無いのだ。」
シェリスと呼ばれた男は私の右コメカミ手前2㎝で停止したままの弾丸に手を伸ばした。
「待って。君のその行為も運命に反しはしないかい?結局君は此処まで手を出さなかった訳だし、彼はもう来てしまったんだよ?」
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