ある作家の話

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ここは、イギリス。 産業革命の最中だ。 全く住みにくい社会だ。 私は、新しいお話を作るために街に話題を探した。 汚くなった川に入って遊ぶ子ども。 それを汚ならしいという目線でみる着飾ったやつら。 そう、はっきり言って今は難しい社会だ。 簡単には、金は手に入らない。 そう、それはそれは悲しい世界だ。 着飾った連中が哀れな人間をマリオネットのように扱う。 ガタンガタンと向かってくる馬車には中にうつむいた人々がいて、鎖に繋がれ運ばれている。 工場からは、もくもくと煙があがっている。 そして、その道路の隅には、縮こまって座る老人がたくさんいる。 その周りだけ、曇りかかっていて、よく見えない。 そう、彼らは、死を待っていた。 生きることは、死を待つ人間の行列に並ぶこと。 そう恩人の叔父が言った。 彼は今もその行列に並んでた。 だが、私はその列から未だに目を背けることしかできなかった。 そう、彼らのように希望に手を伸ばすのを忘れてしまった人間を助けることはあくまでも出来なかった。
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