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「よし」
夜。村が寝静まってからツヅラは行動を開始した。
登った時と同様に鉤爪付きロープを使って村へ降りる。外壁を登った時とは違い、降りる時は十秒もかからなかった。
ツヅラはまず村の配置を思い出す。時間はたっぷりあった。村を俯瞰(ふかん)して配置くらいは完璧に覚えていた。
進む方向を確認する。目指すは北。目的地は牢屋だ。
鉤爪は回収せずに行く。もしもの時の為の保険だ。
警備があるのは正門だけで、中に入ってしまえば楽なものだった。
見回りなどおらず、一度も足を止めることなく牢屋へ到達した。
「悪いな」
ツヅラは船を漕いでいた看守を手際よく無効化。壁に掛けてあったリング状の鍵束を取り、奥へ向かった。
牢屋は灯り一つなく、足元が闇に埋没するほどに暗い。石でできた床や壁は黒ずみ汚れている。
どこからどこまでも無機質で、客観的に見ても不気味だった。
先に進むごとにツヅラは深く眉を寄せた。どの牢にも鉄格子の向こう側に囚人の姿がない。
ツヅラが空疎な印象を受けたのも当然だ。牢屋と言うのも名ばかりなのが実情だった。
どうりで警備が杜撰なわけだ、とツヅラは納得した。
看守が一人。ましてや居眠りしているなんて通常じゃ考えられない。
そして最奥。そこに目的の人物がいた。
「見つけたぜ」
いたのは二人。
まだ十五にも満たぬであろう二人の少女だった。
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