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少女と精霊は時折その池で語らった。
言葉を重ねる度に少女の精霊を愛する気持ちは高まり、精霊は少女へ惹かれていった。
やがて少女は双子の女の子を産み、母となった。
赤髪の姉を椿姫(ツバキ)、青髪の妹を瑞姫(ミズキ)と名付けた。
彼女と精霊は幸せだった。しかし遠くない未来に終わりが来る事を知っていた。
なぜなら精霊の村では、精霊と交わる事は禁忌とされ、死罪を持って償うようなっていたからだ。
それから十三年。
振り返ってみれば一瞬。まさに瞬きを一度する間に過ぎて行ったかのようにすら思えた。
それは娘達と生活したこの十数年が、実に充実していたことを示していた。
たった十三年。しかしそれは奇跡的な長さだ。
母として欲を言えば十五まで育てたかったが、普通に考えれば数年持てば良い方だ。運命に感謝こそしても、恨む道理はない。
なにせ精霊の村は他の村との交流がない。
夫はいないのに子供がいるとなると、夫が精霊である他には考えられない。
十三年という月日は、人間と精霊の交わりの前例がなかったので疑いの目がなかなか向かなかったことと、青年の影での尽力がなし得た成果だ。
しかしその時は来てしまった。
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