Phase 1

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Phase 1

「十二時、三時、八時の方向に敵……反応多数、友軍機、囲まれています」  レーダーと衛星カメラから得た情報で築かれた三次元マップ、その中に次々と現れた敵性反応は数三十。 対して囲まれている友軍機の数は三、数的不利は明白。  キングスクロス駅ターミナルに漂う硝煙とオイルの匂い。 帰宅ラッシュの喧騒はなく、響きたるは無機質かつ重厚な駆動音。 そこに群がる鋼鉄の巨人達が、罠にかかった獲物を弄らんと鈍重に歩を進める。  人型機動重機「レギオン」、全長五メートル前後の鋼鉄とコンピュータの塊。 堅牢さが滲み出る無骨なフォルムのレギオン「タイガー」、包囲網を完成したあたりで停止。 その巨躯すら小さく見える大筒を構え、逃げ場の無い獲物を捉える。  獲物、背中合わせに身構える三機のレギオン。引き締まった流線型の装甲を持つレギオン「ジュラーヴリク」。 武器と呼べるものは腿に格納された二本のダガー、左腕のワイヤーガンのみ。 背部にはつい先刻まで飛行試験を行っていたフライトユニット、それにテスト段階の光学兵器が積まれている。 <ちょっと陸斗、どういうことよ! こっちは手薄なんじゃなかったの?> <市警の情報が位相遅れなのはいつものことでしょ?> <無駄話をしている暇もなさそうだぞ>  無線で送られている友軍機からの非難、管制車両内に設置されたモニタで各員の様子を確認。 各員文句をたれながらも至って平生、作戦に支障はない。  手元にキーボードを手繰り寄せ、必要な情報を入力。 地形・時刻・天候・その他今回に限る条件等々を各機、および本部「UCL兵器開発局」に転送。 ヘッドセットのマイクを口元に寄せる。 「クレア」<遅い!> 「アリシア」<はいはい> 「ゲン」<応>  いつもの作業、いつの間にか日常と化したやりとり。 いつか元に戻る、いつか戻すと心に誓い、青年はヘッドセットを装着する。 迷いや躊躇いは無かった。 「バルチャー隊、交戦開始!」 <<了解!>>
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