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◇◆
急いでチンピラ達の倒れる廃ビルの階段をかけ上がり、最上階『会議室』のドアを開ける。
このビルはどこぞの子会社だったらしく、ボロい外見に反して部屋数が多かった。でも、
兄さんがいるとしたらこの『会議室』しか考えられない。
明らかに周りの部屋とは違って殺伐とした雰囲気が漏れ出ているからね。いくら喧嘩のド素人でも迷わず疑うぐらい怪しいからね。
ドアを空けた僕の目に、真っ先に飛び込んできた光景。
それは、
錆びた鉄の椅子に縛り付けられうなだれている傷だらけの兄さんと、狂人的な笑みを張り付け金属バットを今彼に降り下げようかという所のチャラ男だった。
やっぱり賀山だった。……って、そんなこと考えてる場合じゃない。
兄さん!
手近にあった鉄骨を咄嗟に兄さんとバットの間に差し込む。
金属同士が接触する音がして、それに驚いたのだろう、賀山のバットに入っている力が僅かに弱まる。
よし、行ける!
鉄骨でバットを振り払い、賀山の手を打つ。バットを取り落とし、微かに彼が呻いたが容赦なく頭をコンクリに叩きつける。
ふう。
気絶した“柊"ボスに一瞥をくれ、僕は兄さんの方を向く。
兄さんは丁度顔を上げた所で、目が合ってしまった。
ごめん。こんな目にあったの、僕のせいだよね。僕がもう少し自分の部屋で考えていたら…。
僕は、申し訳ないと言う気持ちを込め、兄さんに微笑みかけた。
「兄さん……大丈夫?」
兄さんは呆気に取られたように賀山と僕を交互に見ていたが、ポツリと言った。
「……遅ェよ」
「フフ…ごめん」
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