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メイドが、入るなり叫ぶ。
その声は喜びに満ち溢れていて、聞いた者を思わず興奮させる響きがあった。
「おお、よくやった!」
顔を輝かせ、赤毛の男が立ち上がる。椅子が大きな音を立てて倒れるがそんなことは微塵も気に留めていない様ですっ飛んでいった。
執事服の男は、落ち着きなく、大人気などかなぐり捨てて走っていった“閣下"と呆気にとられて扉を見つめているメイドを見て、くすりと笑った。
その声にメイドはハッと我に返り、苦笑した。
「国王と言えど、閣下もやはり父親ですね。我が子の誕生となると落ち着いてはいられませんか。…まあ、私も少し興奮してしまったのだけれど」
執事も、やれやれとプレイ中のチェスを見やる。
「普段は私など遠く及ばない実力者なのですが――今回私にチェックをかけられ、少なからずショックを受けていらっしゃった様でしたよ」
二人は揃って肩をすくめ、赤毛の男を追ってゆっくりと歩き出した。
◇◆
「イレーヌ!子供は!私達の子は!」
妻がいる部屋の扉を、勢い良く開く。扉の外ではメイドの一人が今年五才になる息子―第一王子とベンチに座り、膝枕をしながら子守唄を歌ってあやしていた。
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