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「あ、あ、ああああの、僕もう行っても…いいです、か?」
「ん?ああ、良いぞ、どっか行け。」
ひどい、兄さん。
でも僕は有り難く退かせてもらうことにした。
◇◆
時計を見る暇がなかったし、自分の部屋のカーテンがしまっていたせいで気付かなかったけど今は夕方だった。
うっすらと赤みがかった雲が緩やかに空を泳いでいる。
兄さん達……大丈夫かな?
さっき僕の部屋に入ってきたチャラ男は賀山と言って、最近うちに入った。
僕ははっきりいってああいうタイプは苦手中の苦手。
それにしても…“柊"か…。
柊はここらでもかなり大きくて有名な族だ。
兄さんは見栄はって“小さい"とか“今日中に"とか言ってたけど、本当の所うちとほとんど差はない。
さっき調べた情報からすると、柊の族長は切れ者で、相手をはめるのが上手いのだとか。
力でごり押しの兄さん達“すとろんげすと"とは相性が悪いんじゃないかな?
公園のベンチに座りながらそこまで考えたとき、
声をかけられた。
「よぉねーちゃん。遊ばねェか?」
!?
「へ!?……い、い、いいです!!
ま、まま間に合ってますッッ」
ナンパか?いや、雰囲気的に絶対ちがう!僕に何の用だか知らないけど、はやく逃げ…
「そんなこと言わずにさぁ」
「っ!!」
急に肩に手を掛けられ、僕は縮こまった。
「あ…あの、あなた方、何なんですかっ」
ど、どうしよう?
「ああ…。“柊”って言えばわかる?」
“柊"!
嘘…。
「あ、あの!…手を離して下さいませんか?と言うか離して貰えないとその、困るんですが―…」
「それは出来ねぇ相談だな」
「え」
あれよあれよという間にベンチの周りが男達に取り囲まれた。
「あんた…“すとろんげすと"の情報係で総長の妹らしいじゃん?」
そこまで言うと、リーダー格と思われる男は
にやりと笑った。
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