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◇◆
「なんで…、なんでだよ!」
「なんで?――と、言われてもねぇ?」
俺は今、“柊"の隠れ家――廃ビルの最上階にいる。
あのクズ(みずき)が行った後すぐに出発し、“柊"の部下を倒し、ここへ。
だが、ボスはそこにいなかった。
代わりに聞こえてきたのは、最近俺の団に入ってきた新人のチャラ男の声。
「はは…引っ掛かった~♪」
何か頭に鈍い痛みを覚えると同時に、意識が遠退いて―――…
気付いたら、椅子に、手足を縛り付けられていた。
「ヒヒヒッ…単細胞だねーあんた!ホントにボス?」
「っ…賀山…!」
鈍器でなぐりつけられ、俺の体の至るところにこぶやアザ、膨れ上がっている所もある。
見下した目で俺を見る賀山。―が、ふと顔を緩める。
「あんたはバカだけどさー…妹のみずきちゃんは可愛いよね。プロポーションはそこそこだけど、頭良いし。
…全く、あの短時間で俺らの情報探し当てちゃうんだもん、計画が狂うとこだったよ」
にぃ、と嫌らしく笑う。
まるで俺を脅迫するかのように。
「それに――みずきちゃんは、あんたの唯一の弱点。……だろ?」
「!テメェ…っ」
俺の反応を面白がっているのか、賀山は笑みを一層深くする。
「いいね、その顔。半信半疑で試してみたんだけど…。もうすぐ会えるよ?彼女に」
瑞木!?まさか!
「うん、気を失って無防備な彼女。ハハ…彼女を痛みで目覚めさせてあげたら君はどんな顔を見せてくれるのかな?」
「………瑞木には、手を出すな…っ!」
掠れた声が出た。
こんなことに巻き込んだのは、俺だ。あいつには指一本触れさせるものか!
賀山の、その憎らしい顔から、微笑が消える。
「なーに?普段は“クズ"とか呼んでる癖に。ボス、俺に瑞木ちゃん下さいよ、ねぇ?良いっスよねぇ?ハハハッ…でもさぁ。あんたの反応、予想通り過ぎて、つまんないの。解る?」
また賀山の顔には笑みが戻るが、目は笑っていない。
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