序章

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あの一件が無ければ、平凡な生活を送っていたのかも知れない。 当時から付き合っていた彼は、忙しさで飛び回る私に呆れていた。 「あのさ、仕事と俺とどっちが大事なわけ?て、言うかさ、何で俺がこんなセリフ吐いてんだよ」 忙しさもあった、けれども任された仕事は、愉しすぎた。 彼と別れるのに、そう時間は掛からない。 尊敬もしている彼でもあった。仕事も出来る、それでも、今真横に座るこの男。 若くして会社を上場させる様な男の傍で仕事をしていると、急につまらない男に見えてしまった。 「ところでお前、男出来たのか?」 「社長、セクハラです」 誰のせいだと思っているのか、無神経さに腹が立つ。 「相変わらずキツイな~。相手の男が可哀想だな」
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