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「おまえ、気がついてたのか?」
和泉さんが不意に言う。
「え?」
「京と正也。」
「ああ、朝からずっとですから知ってましたよ。」
「そうか。理由は?」
「たぶんヤキモチです。」
「なんだそれは。」
「知らないんですか?」
「いや、ヤキモチが何かは知ってる。」
和泉さんが侵害だという顔で俺を見る。
「ああ、そうですよね。昨日の女の子ですよ。」
俺はちょっとふざけただけだったのに、和泉さんが真顔なので、スルー。
「ああ、そういうことか。」
「正也だけじゃないんですよ。朝は京も不機嫌で。」
「京が?」
「ええ、正也もあの子に見惚れてたはずですから。」
「正也も?」
和泉さんは“も”を強調していう。
「ええ。」
俺は和泉さんを見上げる。
和泉さんは俺を見下ろす。
「どうした・・・挑発するなよ。」
和泉さんは落ち着いている。
「したくなるくらい冷静だからですよ。」
「あたりまえだ。・・・風呂入って来る。」
和泉さんはぽんぽんっと俺の頭を軽く叩いて部屋を出て行った。
なんだ、つまんねえの。
物件の資料が目に留まる。
もう少ししたら、和泉さんと同室も終わりか。
3部屋をゴリ押しして一緒の部屋で押してしまおうかな。
でも、それなら引っ越す意味がなくなるし・・・。
っていうか、引っ越し延期すればいいじゃねえか・・・。
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