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ちらりと目線を送ったが、美咲は鏡を見ているままだったから、まるで自分に言っているかのようで、思わず笑ってしまいそうになる。
私が口を開かないからさらにいらついた口調で、しかし声量は押えて「なんか言えよ」と駄目押ししてきた。
「あ、ここは、内巻きでお願いしまーす」
ヘアメイクさんに明るく告げる。美咲の怒りが頂点に達しそうだったから、そこでようやく振り向き、
「ゴメンナサイ、美咲さん。なんか、不快にさせてしまったみたいで…」
と殊勝な顔で言う。
怒りだけだった美咲の顔色に戸惑いがにじみ、私は自分の勝利を確信した。
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