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典子の目が鋭くこずえを見つめる。
その瞬間、こずえは店の喧騒がかき消されたかのように感じた。
典子が真剣に話すともっともらしく聞こえたりする事があるのだ。
無音の中、こずえはカウンターに座っている一人の大きな男と目が合った。
白いシャツに薄い茶色の皮ジャン。青いデニムに皮ジャンと同色のブーツ。
「マフィアって何だよ! 典子は映画の見過ぎ」
真生が茶化し、こずえの耳に店内の賑わいが戻ってきた。
「誰かに尾けられたりしてないわよね?」
「たぶん……」
典子の問いかけに答えながら、こずえは目だけでカウンターの男を探したが、すでに姿は見えなくなっていた。
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