試験

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手紙が来てからちょうど一週間後のこの日、試験の会場となるこの大学前に、大勢の参加希望者が集まっている。 唯は友達のためとは言え、この息苦しい場所に来たことを後悔していた。 腕時計の短針は、もうすぐ完全に『6』の数字を指す頃だ。 そろそろ手紙に書いてあった受付時間。 「時間だね……」 唯はそう呟き、背伸びをしながら校門の方を見ると、門の向こうにはいつの間にか数人のスーツ姿の男が立っていた。 「これより、受付を開始致します」 一番前に立つ強面の男が、そう言って他の者達に合図を送り、校門を開かせる。 「年齢や身元を証明する物と、皆様に送られた手紙の二点を提示して下さい。その後は係員の指示に従って下さい」 強面の男はそう言うと、一番近くにいた女性の持っている黒い手紙を半ば奪い取るような形で受け取った。 女性は慌てて身分証を取り出し、別のスーツ姿の男と共に校舎の方へと歩き出す。 その様子を見て、唯は鞄の中から身分証となるものを取り出し、手紙と一緒に右手に持って準備をした。 「未成年にもこんな時間に来させるなんて、どうかしてるよな」 どこかで誰かがそう呟くのを、彼女は眠そうに目を擦りながら聞いていた。
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