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「ヒトの話は最後まで聞けっての……」
チッと舌打ちをする俺。
この口煩い上司には、いつも苛々させられる。
せめて他人の話を聞かない癖と、口煩さささえ何とかすれば、もっと部下から尊敬されるだろうに。
それにしても、ヤツが妙に母親っぽいのは気のせいだろうか。
あの口調と言い、小言の内容と言い。どうしても俺には、上司が『オカン化』しているようにしか見えない。
それとも主婦化――いや、主夫か……。
まぁいい、そろそろ現場行くか。
出動の準備を始めるため、どうでもいい思考を中断した俺は、軽く目を閉じて一つ深呼吸をした。
肩から背中にかけて意識を集め、呼吸に合わせゆっくりと翼を広げる。
始めは小さく折り畳まれた状態だった翼は徐々に膨らんでいき、しばらくもしないうちに完全に広げられた。
月明かりで美しく輝く、漆黒の翼と銀のロザリオ。
全ての準備が整った俺はもう一度深呼吸をすると、足元に広がる底無しの闇へ一気に飛び降りた。
右手に“死神の鎌”を携えて――。
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社内週刊誌『G.Scythe』12月号に掲載、社員エッセイ「死神達の日常」より抜粋
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