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雨のベールに全体を覆われ、辺りの景色を幻想的に変えられている夜の町。
そこの本道に設けられた、一本の横断歩道の中央付近に僕はいた。
まるで、誰かに放り投げられたように、堅いアスファルトに倒れ伏しているその身体は、冷たい雨で芯まで冷えきり、感覚どころか痛みさえ感じられなくなっていた。
視界は雨水によって濁り、濃い水の臭いが辺りにたちこめる。
至る所に出来ている傷口から流れ出ているはずの血も、その生臭い臭いごと雨に洗い流され、僅かな痕跡を残す事すら許されなかったらしい。
身体が冷えきっているせいか血を失いすぎたせいか、段々意識が遠退いていく。
朦朧とする意識はこうして辛うじて保たせているのがやっとで、誰かに軽く息を吹きかけられただけでもすぐに消えてなくなりそうだ。
晩秋の冷たい雨が、シトシトと更に雨脚を強めていく。
あぁ、絶え間なく降るこの雨は僕の身体から容赦なく熱を奪い、やがて命の灯火をも消し去ってゆくのだろう。
これから訪れる未来も、大切な人たちとの思い出をも道連れにして。
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