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願い星
出逢い、それは運命。そして、私生活の中で、不意に起こる出来事。
――――――――――――――
「冬は、寒いな~」
私、安藤薫は冬の星の瞬く空の下をマフラーに顔をうずめながら、帰宅している。
すんっ、と澄み渡る、冬の夜空。まだ16時45分だというのに、こんなに暗いとなると、夜には何かが出て来そうだ。
私は、凍える指先を、自分の吐息で温める。
私立中学に進学したから、こんなに登下校が大変なのよ…
はぁ…と溜息をつくと、白い息が、寒そうに空中に出てきた。
さっさと帰ろう。私は、小走りで最寄りの駅に向かう。いつの間にか、雪まで降り始めていた。
と、しばらく走った先に、不自然な塊が地面に転がっていた。それは黒く、明らかに冬の地面には現れないモノ。
「何だろう…?」
私は気になり、駆け寄ってみると、どうやらそれは、黒猫のようだった。
黒猫は、体を小刻みに動かし、今にも息絶えそうだった。
(こんなに寒い中……)
どうしようか。運の良いことに、私の家は一軒家だ。動物飼育も許可されている。
連れて帰ろうか……?
しかし、寒い。何にこの黒猫を包む?
「~~~~!」
バッ!
私は、迷いを吹っ切り、自分のマフラーで黒猫を包み込み、抱き上げる。
駅まで近い。下車したら、家は目の前だ。急ごう。凍えているから、そう長くない命かも知れない。
私は、駅まで突っ走り、来た電車に駆け込んだ。そして、10分程電車に揺られると、目的地に着く。
すぐさま駅を出ると、家にダッシュで帰った。
「ただいまっ!!お母さん、猫が道端に倒れてたの。温かいミルク作って貰えない?」
「薫?あんたの分は?」
「いらない!」
玄関でそう言い残すと、私は自室に引きこもった。
「大丈夫だからね…絶対死なせないからね……!」
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