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私は、椅子に掛けてあった膝掛けを黒猫に掛け、ベッドに寝かせる。
そして、猫の背中をそっと撫で、「大丈夫だから…」と言い聞かせてやる。
すると、私の背後でコンコンとノックが聞こえた。それに続き、お母さんが声を掛けてきた。
「薫、ホットミルクできたわよ。開けるね」
そう言って、お母さんはドアを開け、部屋に入ってくる。ホットミルクの容器には、小さなスプーンもあった。
「薫が猫を拾ってくるなん…!?やだわっ、黒猫じゃない!」
「え……?」
お母さんは、さっきまで猫を気遣ってくれていたのに、突然態度が豹変した。明らかに、黒猫を嫌がっている。
「お母さん…?急にどうしたの…?」
「薫、不幸をお母さんにまで、移さないでおくれ?黒猫は不幸を呼ぶのよ」
お母さんはそう吐き捨てると、ドアをバタンッと勢いよく閉めていった。
「黒猫は…不幸を呼ぶ……?」
動物好きの私からしたら、そんな話ただ怒りを覚えるだけよ。何さ、あれなの?黒猫が横切ると不幸になるってあれ?
「くだらなっ…」
思わず、溜め息混じりに私は呟く。――と、その時だった。
「君の…今の言葉……本心かにゃ?」
「え……っ?」
私は、声の聞こえた方を向く。それは、あの黒猫。温まったのか、どうなのか、ピンピン立っていた。
「僕は、神猫。神様だにゃ!突然だが、君の願いを叶えてあげるにゃ!」
「わっ、私は……安藤薫………って、えぇー!!?ね、ね、猫が、喋ったー!?」
「うっさいにゃ~、僕は猫じゃなくて、神猫にゃ。普通の猫じゃないんだにゃっ!そんなに驚かないでくれにゃ」
黒猫改め、神猫さんは、自分の手で耳を塞ぎ、そう言った。私は、悪いことをしたと思い、黙った。
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