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“更新病”
それが私の病名です。
毎晩零時、
私の記憶は消えます。
だけど残酷な話、
神様は半端に優しい。
私が……私全てが綺麗さっぱり、
真っ白に消えれば良いのに
それは許されない。
消えるのは想い出。
足し算や五十音、
御手洗いの使い方、
要は日常に必要な記憶は
くっきりはっきり残る。
でも――それまでの事。
何をしたのか、
何を見たのか、
何を味わったのか、
誰と話したのか、
誰が友達なのか、
誰が信用できるのか
挙げ句の果てには
何を想ったのかさえ闇の中。
私は、その時が来た瞬間に、
知識だけ詰め込まれた
大きな赤ん坊に変わる。
だから、怖い。
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