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「おかえりなさい」
1つだけ紫色の丁寧な文章。
特定個人に向けたチャットの色、
もちろん宛先は私だった。
「ただいま~」
目の前に彼は居た。
西部劇みたいな黒い帽子、
すらりと伸びた手足に似合う
漆黒のスーツ姿の男の人。
オレンジ色の友達チャットに
紛れていた挨拶の相手。
「寂しかったじゃないか、薄荷」
そう良いながら笑う彼。
彼の名前は“真坂”、
読み方は“まさか”さん。
ちなみに“薄荷”、
つまり私の名は“はっか”。
「私もですよ?」
「どうだかなあ?」
彼は笑顔で顎髭を撫で回して、
黒い帽子を被り直しつつ言った。
スーツ姿といい
服装がマフィアみたいで
最初は度肝を抜かれたんだけど、
実際話したら良い人だった。
人は見かけによらない。
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