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英雄
「そう簡単に諦められるもんでもないだろう。いったいどういうつもりなんだ、竹本くんは…」
その日の夜は純二から電話はなかった。事件で帰って来れなかったのと、茜がわざと英雄からの伝言を、伝えなかったからだ。
それから何日かが経った。なおみは、純二との仲がこじれていることを誰にも言わず、1人悩んで、夜も眠れないほどだった。そして、ある土曜日の午後、片側3車線ある交差点の横断歩道の手前で信号待ちをしていた。
信号が変わり、待っていた人たちが渡り始めた。。なおみもそんな人たちに押されながらも渡り始めたが、中央付近でめまいを感じ、倒れこんでしまった。目の前に運よく、白バイ警官がいて、その警官に助けられた。
松田
「君!どうしたんだ!大丈夫か?」
なおみ
「う、う~ん、純二…さん」
この警官、港署交通課の松田秀樹という男で、前に智子の護衛をしたことのある青年で、なんとなく純二に似ていた。
松田はすぐになおみを路肩に寄せ、救急車を呼んだ。
松田も一緒に病院について行き、なおみの荷物から身分のわかるものを探し、自宅に連絡した。なおみが倒れたことを聞いて、良子は病院へ急いだ。
良子
「なおみ…、こんなにやつれて…」
なおみ
「う、う~ん、あっ、お母さん。私…、どうして…」
良子
「道で突然倒れたんですって」
なおみ
「あっ、純二さんは?純二さんが助けて…」
良子
「何言ってるの。助けてくれたのは、この方よ」
なおみ
「えっ」
松田
「港署交通課の松田です。俺の目の前で倒れたんでびっくりしましたよ」
なおみ
「交通…課。…」
なおみは突然泣き出した。
松田
「あ、あのー」
良子
「ごめんなさい。この子、今精神的に参ってて…。情緒不安定なんです」
松田
「何か辛いことでもあったんですか?」
良子
「ええ、まぁ」
松田
「…なおみちゃん、退院したら、気晴らしにどこか遊びに行こうか」
なおみ
「えっ?」
松田
「楽しいことしてたら、嫌なことなんて忘れるからさ」
なおみ
「…考えておきます」
その日1晩入院し、翌日退院して、1日ゆっくり過ごし、月曜日には体調も戻り、元気に学校へ行った。
学校の帰りに、なおみは港署に寄った。
なおみ
「こんにちは」
受付
「いらっしゃい。今日も一係?」
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