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「大きいな…………」
上谷優也は校門の前で立ち止まり、あまりの校舎の大きさに圧倒されていた。
今日から俺はここの生徒になるのか。
未だに信じられないけど、これは全て父の知り合いのおかげ。
俺の母は俺を産んですぐに病気で死んだと父から聞いた。
父はそんな絶望しか見えない人生でも必死に俺を育ててくれた。
そんな父を俺は心から尊敬している。
けれどそんな父の存在が大きい俺だが、高校受験の時に少し状況が変わってしまう。
「優也。すまんが父さんは今年から出張が増えるみたいなんだ」
「珍しいな、父さんが出張なんて」
今までほとんど出張なんて無かった父だけど、俺が高校生になる直前でこの事態はマズい。
「本当にすまんな。これから受験だと言うのに」
「いや。別に父さんが謝る事じゃないし、それに仕事なら仕方ないだろ」
と言いつつも俺の内心は、これからの生活を考えるだけで不安だった。
「そうか……やはり優也なら分かってくれるか!」
すると父は少し気分が上がったように会話をしだし、話はどんどん別の方向へ。
「それと優也には黙っていたんだがな、実はもう優也の通う高校は父さんが見つけてあるんだ」
「えっ!?」
唐突に話は俺の高校の話になり、父はまるで担任の先生のようにその高校を薦めてきた。
なんでもそこは私立の学園で、かなりのお金持ち学校らしいのだが。
「ははっ、金の心配はするな!実はそこの学園長とは古い知り合いで俺たちの事情は知ってる」
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