アイドルと生徒

4/20
13430人が本棚に入れています
本棚に追加
/453ページ
優也の父、悟(サトル)はその日の夜にある人物へ電話をかけていた。 「もしもし、俺だが」 「あら悟さん……この電話をしたって事は……」 悟の電話の相手は、これから優也が通う学園の学園長であった。 学園長の声はまだ若々しい女性の声だが、年齢は三十代。 「あぁ……優也はそっちの学園に入ってくれると言ったよ」 「良かったわぁ!これで香奈も喜ぶわね」 「そういえば香奈ちゃんは元気か?最近家に顔を見せないけど」 「ふふっ……香奈ったら優也君と中学が別になったから最初の年は私にずっと怒ってたのよ?」 「それは元気で何よりだな、けどそれが家に来れなかった理由なのかい?」 「それが違うのよね、実は香奈ったらわざわざ優也君に会いに行くのが恥ずかしいらしくて、いっつも途中で学園に帰ってくるのよ」 「なんだいそりゃ?香奈ちゃんが恥ずかしがる姿は俺には全く想像できないな」 「ふふっ、見た目はクールな娘を演じているけど、本当は香奈も恋する乙女なのよ」 「なるほどな、しかし香奈ちゃんが優也をなぁ……まぁ優也は他人に気を遣いすぎるところがあるからな、女の子はそういうのには弱いみたいだな」 「あら……悟さんは気付いてたの?」 「ははっ、俺と優也は二人で何年生活してたと思ってるんだ、逆に気付かない方がどうかしてるよ」 悟もまた、優也の存在は大きい。 そんな悟だからこそ、赤ちゃんの頃から育てた優也をそろそろ独り立ちさせたいと考えていた。 そんな時に悟の昔からの知り合いの、藤堂沙恵(トウドウサエ)から一本の電話があったのだった。
/453ページ

最初のコメントを投稿しよう!