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母を失ったのは20年前でその2年後だから、小学校低学年の頃だったろうか。
夜の廃工場で退治した食人鬼が初めての狩りか。
その場には父と兄もいて、父に自分がとどめを刺すように言われた。
一歩前へ踏み出した先に何に使うのか用途不明の機械が打ち捨てられているそのすぐ傍にうずくまる食人鬼。
二の腕からは血を流し衣服は切り裂かれて露わになった皮膚にも傷があり、どう見ても手負い。
しかし、こちらに向ける瞳は差すように鋭く敵意に満ちていて、獲物の迫力に気圧され硬直し銀のナイフを持つ腕がピクリとも動かなかった。
一瞬、食人鬼が目を細め鋭利に口を歪めた。
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