第九話【花嫁衣装】

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「里美はいい妻でした。 私が会社を辞めて定食屋をやると言った時も不平をこぼさずについて来てくれましたし、金銭面が苦しくなると妻も一緒になって働いてくれました 」 一旦止め、斜め下のテーブルに視線を落とし若干だが唇を震わす。 「けれど、長年の家事と仕事で無理が祟り去年入院をしまして‥‥今年に妻は亡くなりました 」 声を切った後も賢二は何かをこらえるようにじっと同じ姿勢のままでいた。 ここまで聞いて里美が霊となって人を襲う要因があるようには思えなかった。 悪霊となるからには生前に、非業の死や強い恨み現世に留まりたいと思うほどの未練があるはずなのだが、彼女がそのような精神状態だったのかは聞いた話だけでは見受けられないのだ。
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