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順子が鼻をひくひくとさせながら。
「ど、どうして 」
「おまえが小さい頃に言ってた将来の夢だよ。 母さんずっと覚えていたんだ 」
そこまで答えると相手の感情と共鳴したように賢二は肩を震わせ頭を垂れた。
鼻を啜る音が聞こえた。
家族を失った悲しみは時間と共に和らいでいく場合もあるが、目の前の父娘は久方ぶりの再会だろう、故人への偲びを共有することで気持ちを整理しているようだった。
横を向くと真と目が合う。
奇しくもこの二人のやりとりで里美が霊となり得る未練が分かった。
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