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強めの言葉で返したつもりだったが、けれども順子はいったん目元を落とし。
再び向けられた瞳の奥には穢れや曇りのない純粋な色が現われていた。
そして、毅然と言い放つ。
「違います。 今まで何も返してこなかった‥‥だから、せめて未練なく天国へ逝って欲しいんです 」
順子の言葉に触発されて記憶の箱が完全に開き、思い起こされる最初に芽生えた狩りの動機。
それは“人助け”だった。
ただし、自分の正義心や罪悪感のための建前の、人助けとは違う。
純粋にその人を救いたいがための“人助け”である。
だから、順子の母を思う気持ちが思い出させてくれたからこそ、力になりたい。
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