第九話【花嫁衣装】

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「気付いてくれるのか、って 」 魔法陣を描いた箇所に、3つ置かれた銀製の盃型の容器へそれぞれ黄色い粉末を盛っているところに、何度目か分からない光鬼の声が耳に入った。 顔を上げると、こちらに向けられたその瞳が揺れる。 「母と子の絆をなめちゃいけないよ 」 ふっと笑って返すと、そうか‥‥と低く呟いたのとほぼ同時に、ここのホールに繋がる連絡通路の方からコツコツ、と踵を鳴らす音がした。 遅れて現れた姿は、無機質な空間に突如咲いた穢れの知らない一輪の白い花冠を思わせた。 白のドレスを身に纏った順子である。 支度部屋で花嫁衣装に着替えてもらっていたのだった。
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