《Kの悲劇》第一章 Kの悲劇

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 見てみると、財布の中には二千円あった。  「したがって犯人は、沢木や」  なるほど。……そうだったのか。  「違う」  続いて、沢木が言った。  「俺じゃない。二千円と『犯人は孝司』。共通点はない。したがって犯人は……」  僕にはその瞬間、犯人が分かった。  「判らない」  沢木は判らないらしい。したがって僕が真相を言うことになった。  「彼は殺されたんじゃなく、事故で死んだんです。便器にこの紙を落とし、それを拾おうとして、足を滑らし、便器に顔がはまり、抜けなくなった。しかし、この紙がもったいない彼は、口で拾った……。つまり、殺人ではありません」  「なるほどなぁ」  西涼が言った。みんなも納得顔だ。  しかし、一人苦々しい顔をした孝司が、ぼそりと呟いた。  「判った。そこまでばれてるんじゃ仕方がない。全部俺がやったよ」  やっぱりな。……僕の心境だ。  「あのダイイング、メッセージにまで気付くとは、そう、あれは、おまえの言ったとおり、『犯人は孝司』という言葉を並び替えると、犯人は孝司……と読み取れるということだ」  孝司が言った。  「警察へ行くよ。それとも和也君のところか?」  「なぜ殺した?」  彼を止めようとはせず、沢木が質問した。  「あのソプラノリコーダーは、実は俺の妹のものなんだ。奴は、口の部分を付け替えて……『間接キスしたで』と、俺を脅してきやがった……だから……」  「もういい。あれは事故だったんだ」  僕は、必死で涙をこらえて、そう言った。動機を聞いて同情してしまったためだ。
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