《Kの悲劇》第一章 Kの悲劇

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 そして、閉店三分前に現れたのが、今日朝から入っているはずの、沢木である。  体格中肉中背。この店の元リーダーである。しかし、相次ぐ不正の発覚と、昨年店内で起こって四秒で鎮圧され、店員と有田を恐怖のどん底へたたき落とした「Bの乱」の首謀者として失脚して以来、窓際の職へ追い込まれた。業務能力において右に出るものはいないのだが、客がこないこの店では、残念ながら何の役にも立たない。  閉店の時間がきたので、蛍の光をみんなで輪唱し、自動ドアの電源を切った。  そして、終礼をしようと、全員でバックルームと呼ばれる休憩室に入ったときに、事件は起こった。  「ばぁぁぁん」  地響きと共に、大きな衝撃音がなった。店全体が揺れている。その激しい揺れに、陳列ケースは倒れ、下敷きになったのであろう、有田の悲鳴が店内に木霊する。  しかし僕達は早く帰りたかったため、気にせず終礼を始めた。  終礼を終え、店の外に出ると、外は水浸しだった。いや、水浸しなんて半端なものじゃなく、Bは、完全に陸の孤島となっていた。  「また、水道管が破裂したみたいやな。全然気付かへんかったわ。いつやろ?」  沢木が不思議そうに言った。  当然である。これほどの事故なら、もの凄い衝撃があったはずだ。  「とりあえず店内で水引くのまとか」  西涼がのたまった。  泳いで帰る、酒、等の意見も出たが、一応西涼の意見をみんなでのむことにした。  店内に入って、やっと僕はあることに気付いた。  和也がいない。  みんなもそのことに気付き、和也の携帯糸電話にかけてみることにした。  トイレから、コールの音がする。  僕たちが慌ててトイレへ駆け込むと、便器に頭から突っ込んだ、和也の死体があった。
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