スノー・フェイス

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 一年中、水面には氷が張り、厳しい寒さに見舞われている常冬(とこふゆ)の国スノー・フェイス。  ──しかし。  現在、前代未聞の異常事態が発生していた。 「また山で雪崩があったぞ!」 「氷が溶けて、川が増水して街が浸水したぞ!」  万年冬のはずの国。  だが、今は春のように暖かい日が続いていた。  そのせいで、山に積もった雪は溶けて雪崩を起こし、広大な湖に張っている分厚い氷はどんどん溶けて川が増水して街が浸水。  こんなことはスノー・フェイス史上初めての大惨事である。 「えぇい! 女王様はいかがなされたのだ!」  と、ひとりの老人が叫ぶ。  この老人が言うように、このスノー・フェイスという国は代々、女王が治めている。氷のように冷たい心を持った方だ。  不思議なことに、そんな女王が治めていると、この国は冬になるのだ。  何でも、名高い雪女を先祖に持つのが理由らしい。  ちなみに世襲制である。 「このままでは、国が災害で潰れてしまうぞ!」  皆が皆、あたふたとしている。いきなりの異常事態にどう対処したら良いのか分からないからだ。 「とりあえず、女王様に謁見しなくては!」  先程から喚いていた老人は言うや否や、女王のいるスノー・フェイス城に駆けていった。
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