スノー・フェイス

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 ほどなくしてスノー・フェイス城に着いた。  すると、各村や街の代表が合わせて五人集まっていた。  全員が呆然としている。  それもそのはず。城を囲っていた、氷で出来た城壁がほとんど溶けていたのだ。  足下は水浸しである。  お互いに顔を見合せ、ひとつ頷いて、彼等は城に入っていった。      ◆ ◆ ◆ 「まことに、そちは可愛いのう。妾(わらわ)はそちに首ったけじゃ」  彼等が目にしたのは、女王がいる玉座の間で、通称、氷心(ひょうしん)の女王と言われている、冷たい冷徹な女王の変わり果てた姿だった。  この女王。名をスノーと言い、長い銀髪でアメジスト色の瞳をした、漆黒のドレスを纏った、雪のように白い肌の美しい女性だ。  そんな彼女は、他国から来ているひとりのイケメン男性に摺り寄り、目からハートを散らしながら甘えていた。 「じょ、女王様!」  と、村からの代表である若い男が声をかけた。 「……なんじゃ?」 「あなた様に何があられたのです!? 外は大変な事態に陥っておりますぞ!」 「何が、とな? 妾に変わりはないぞえ」  端から見ても一目瞭然であるが、本人に自覚はないようだ。  謁見にきた五人は、女王の隣にいるイケメンを見た。  キョトンとした顔で首を傾げている。 『貴様のせいで……』  五人はそう思い、イケメンを睨み付け玉座の間を去った。
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