イチ秒の力

12/18
前へ
/18ページ
次へ
 俺が弱いからクレハさんを独りで戦わせた。  俺が弱いから敵の攻撃に気づけなかった。  俺が弱いから助けてやることができなかった。  俺が弱いから逃げるしかできなくなった。  俺が弱いからクレハさんは自分を置いてけと言った。  俺が弱いから。俺が弱いから。弱いから。弱いから。弱いから。弱いから。弱いから。弱いから。  こうなるのが嫌だったから強くなりたいのに、強くなることができない。どんなに足掻いても一向に。  俺は唇を噛んだ。鈍い痛みと口の中に広がる血の味に、今やらなければならないことを思い出す。  そうだ。今考えなければならないのはクレハさんを無事に逃がすこと、傷の処置をすることだ。傷は…………  クレハさんの腹部に視線を落とすと、きっちり回復魔法で止血してあった。  あとは逃げるだけ。一階の廊下を突き進む。真っ直ぐ走り、つきあたり。そこを左に曲がれば正面ホール。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加