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俺が弱いからクレハさんを独りで戦わせた。
俺が弱いから敵の攻撃に気づけなかった。
俺が弱いから助けてやることができなかった。
俺が弱いから逃げるしかできなくなった。
俺が弱いからクレハさんは自分を置いてけと言った。
俺が弱いから。俺が弱いから。弱いから。弱いから。弱いから。弱いから。弱いから。弱いから。
こうなるのが嫌だったから強くなりたいのに、強くなることができない。どんなに足掻いても一向に。
俺は唇を噛んだ。鈍い痛みと口の中に広がる血の味に、今やらなければならないことを思い出す。
そうだ。今考えなければならないのはクレハさんを無事に逃がすこと、傷の処置をすることだ。傷は…………
クレハさんの腹部に視線を落とすと、きっちり回復魔法で止血してあった。
あとは逃げるだけ。一階の廊下を突き進む。真っ直ぐ走り、つきあたり。そこを左に曲がれば正面ホール。
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