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「────!」
しかし、そのつきあたりの天井を破壊して黒いローブが落下してきた。
もう少しなのに、あと少しなのに敵がそうさせてくれない。
方向を返し、廊下を反対側に走る。はち切れそうな肺を我慢して、息も絶え絶えに問う。
「クレハさん、あとどれくらい魔力残っている?」
「かなり」
「生命維持の分を抜いてだ!」
「…………軽い魔法を一、二回」
それを聞き、酸素が足りずぼんやりしてきた頭で、走りながら考える。
壁を魔法で破壊して脱出というわけにはいかなさそうだ。窓を割って、というのも無理だろう。この建物は外敵が侵入しないよう壁は強固に、外部への出入りは玄関からのみだったはず。
廊下に窓は一つもなく、そのせいで随分と暗い。
きっと、もう逃げることはできない。だから、覚悟を決めないと。
「そうか………なら────」
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