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「──────!」
なりふり構わず来たか。
マリオネットの前方20mから空間を破って敵がぞろぞろと這い出てくる。
その数五体。全て鎧騎士。成る程、しもべの出し入れはそうするのか。
前に三体。後ろに二体。突っ込んでくる様子はない。剣を構え迎撃の態勢。
前のやつらに残り
───────── 20m
突破するには一体一体止めなければならない。早すぎては死、遅すぎても死。
──────── 15
故にタイミングこそ全て。コンマ一秒のずれすら許されない。
─────── 10
足が重い。息ができない。思い通りに動けない。
────── 7
前の敵が剣を振り上げた。
───── 5
後ろは剣を正面に構え
──── 3
目前に死が口を開いて待っている。それでも足を止めはしない。
─── 2
振り下ろされる剣。突き付けられる死。まだ早い。
── 1
両肩、脇腹に剣先が触れた。皮を裂き、痛みが脳を走る。そして──
── ゼロ
固まった鎧騎士たちの脇を抜けると後列の二体が両腕を広げて待ち構えていた。その二体も止め、脇をくぐろうとする。が、
「っ──── !」
背中が焼けるように痛い。斬られたか。先に止めたどいつかがやったに違いない。だが、もう関係ない。そいつが俺の後ろにいる以上、どうでもいい。
歯をくいしばり、先を睨む。マリオネットはもう笑っていなかった。一歩、また一歩と後ずさりしていく。その背中がついに扉に触れると、扉を開こうと懸命にノブを引く。
だが、それは一度開くと次は開かなくなるようクレハさんに魔法をかけてもらっている。言ったはずた、袋の鼠だと。
全速力で直線上を駆けていく。障害はない。これが最後と踏ん張り、遂にやつの目前に迫ると、駆けながらに剣を振り上げた。
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