イチ秒の力

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 あとは剣を降り下ろすだけ。それでこの厳しい戦いも終わる。それなのに、なぜ──  ── なぜ、やつは笑っている?  俺の周りにはもうやつの手先はいないし、召喚の暇もないはずだ。それなのに──  最後の一歩を踏む。その瞬間溢れ出る死の予感。  あぁ、なるほど。理解した。所詮付け焼き刃だ、最後までうまくいかないのも当然だ。  足元から地を破って飛び出した剣。それが脇腹をかき斬っていた。  夥しい血が流れ、足に力が入らず、俺は前のめりに倒れた。  背後で地面から金属の塊が這い出てくる音が聞こえる。  マリオネットが笑い声をあげた。  体を何とか起こし、首を掴んでやるが、それでも笑うことをやめない。  既に俺の勝利は無くなった。それは覆すことのできない未来である。やつはそう確信して、嘲笑うのだろう。だが── 「それは間違いだ」  やつの顔から笑みが消えた。それもそのはず、やつの瞳には手榴弾片手に笑う俺が映っていることだろう。 「勘違いするなよ、あの世行きはお前だけだ」  俺の力は一秒抜き去ること。それは森羅万象あらゆる物事を受け付けないということ。  ピンを抜く。  そして、 「イチ!」
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