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「ごめん、やっちゃった」
「毎度のことですし、もう何も言いません」
決まりの悪そうな表情を浮かべクレハさんは先に中へ入った。が、すぐさま鞘から剣を引き抜く。俺も慌てて中へ。
薄暗い闇の中、クレハさんは静かに剣を構えた。
横倒しのソファー、剥き出しの鉄骨、折れた柱、周囲を見渡しても、広い円形のホールに誰かがいる気配はない。
無音の静寂。張り詰める空気。心臓の高鳴りが徐々に強まっていく。
「── 上!!」
クレハさんの怒鳴り声。襟首を掴まれ後ろに引きずられる。そして、上から何かが落下して先程いた床を砕いた。
「さっそくお出まし?客を待たせないなんて礼を弁えているじゃない、鎧騎士さん!」
着地した鎧騎士が立ち上がる前にクレハさんは距離を一気に詰め剣を振り下ろした。金属音が響く。
「固っ。」
敵は肩の甲冑で剣を受け止めていた。続けざまに剣で脇腹へと斬り返す。
──── ここだ
「イチ!」
敵を静止させた。その隙にクレハさんは背後へ回り込み
──── ゼロ
鎧騎士の剣が空を裂き、クレハさんの剣が甲冑の隙間へ差し込まれた。
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