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「やはり。ラゼル選手でしたか」
「あ…!」
そこに居た人物に見覚えがあったラゼルは思わず声を上げた。
金の髪に橙色の瞳を持ち、燃える様な深紅の鎧とそれと相対する様な深く青い色のマントを身に付け腰に剣を携えた、端正な顔立ちの青年だった。
「ザレフ様ー!」
ラゼルが名を言うより早く、女性二人が叫んだ。
二人はザレフと言う青年の元へ駆け寄ると、先程と同じく、
「サイン下さいッ」
と迫るが、そのテンションや声色はラゼルの時とは明らかに違った。
「はいはい」
ザレフがクスクスと笑いながら色紙とペンを受け取ると、サラサラとサインをし、それを返した。
もう一人の女性がザレフに握手を求めると、笑顔で快く握手をした。
その対応をラゼルはポカンとしながら見ていた。
満足して去っていく女性を笑顔で手を振りながら見送ると、ザレフは、ふぅっと息を吐いた。
ポカンとしたままだったラゼルはハッとして、
「あ、あの、ありがとうございました」
と、咄嗟に礼を言って頭を下げた。が、胸中で礼を言う様な事だったんだろうかと思っていた。
ザレフは振り返るとラゼルに笑みを向けて首を横に振った。
「あれ位構いませんよ。私も、早く貴方と話がしたかったので」
その言葉を聞くとホッとしたのと同時に、話をしたいと言われた事に対して、
「僕と…ですか?」
と疑問を投げ掛けた。
笑みを崩さずにザレフが頷くと、
「此処ではまた邪魔が入っては行けませんので、何処かゆっくり出来る場所に移動しましょう」
そう言ってラゼルに着いて来る様にと促しながら歩き出し、ラゼルはその後に着いて歩き出した。
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