17人が本棚に入れています
本棚に追加
タスマは百年程前にタスマの隣国、リオモネ王国に戦争を仕掛けた国だ。
またその様な事を起こしかねないと思っての発言だ。
「そうじゃ無かったら良いけどな。あくまで俺の見解だから、本気にしないで。」
ラゼルとジューゼの深刻な表情を見るとザレフはそう言って二人の気を和らげようとした。
二人共安心したかの様に息を吐いた。
「…とりあえず、ザレフのご飯作るよ。…昨晩、何も食べずに寝てたし。」
「あぁ。ありがとう。」
「ラゼル、ザレフの左腕に、痒み止めを塗ってあげて。タオルは塗り終わるまで外さないで。掻くから。」
「はぁい。」
ジューゼに返事をするとラゼルは買って来た痒み止めを開封しながら、ザレフに向かい合う様にベッドに腰掛けた。
ラゼルがザレフの左腕の服の袖を捲り上げると、掻いたと思われる箇所が赤くなっていて、所々皮が剥けてしまっていた。
見ているだけで痒さと痛さが伝わり、ラゼルは表情を歪めた。
それでも我慢してラゼルは痒み止めをザレフの左腕に塗り付けた。
「こんなになるまで掻いちゃ駄目じゃないですか。」
「いやぁ、もう、耐えられなくてね。」
へらっと笑うザレフにラゼルは困惑の表情を浮かべる。しかし、何故痒いのか等は敢えて聞かなかった。
何となく、誤魔化されそうな気がしたからだ。
「でも、ザレフさんが元気になって良かったです。」
「ん?そう?」
「はい。…心配だったんです。ザレフさんが、このまま元気じゃ無くなったらどうしよう…って。」
ラゼルはそう言ってタオルを解きながら俯く。ザレフは何も言わずにそれを聞いていた。
「僕にとってザレフさんは頼れるお兄さんみたいな存在なんです。だから…。…僕の我儘ですけど、いつでも元気で明るいザレフさんでいて欲しいんです…。じゃないと、凄く不安で…。」
「ラゼル…。」
ラゼルが話している最中に顔を伏せた。ザレフは彼の目が潤んでいるのを見逃さなかった。
ザレフは俯いたままのラゼルの頭に手をそっと乗せて撫でた。
「心配かけて悪かった。もう大丈夫だからね。」
いつもなら子ども扱いするなと怒るだろうがそれを素直に受け入れ、ラゼルの目から堰を切った様に涙が流れ落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!