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「大丈夫か?」
ザレフが少女に声を掛けると、一面に花が咲き乱れた様な雰囲気になった。ラゼルとジューゼは何事かと辺りをキョロキョロと見回す。
「は、はい。ありがとうございます。」
少女は頬を赤らめてザレフに礼を言った。
助けたのは殆どラゼルだが。
ふとラゼルの背後からこちらに向けて声が聞こえて来た。
四人が声のする方を振り返ると、助けた少女と同じ赤い髪の男が走って向かって来るのが見えた。
「あっ!」
その男を見ると少女の表情が明るくなった。
「ゼネア、此処に居ったんか。」
「お兄ちゃん!」
男はラゼル達の輪の前で足を止めて呼吸を整え出した。
少女はゼネアと言う名で、その男とは兄妹の様だ。
兄に会えて安心したのかゼネアは兄に抱き付いた。兄は子どもをあやす様に頭を撫でた。
「よしよし。…で?この兄ちゃん等は誰や?」
妹の体を離すと、兄はラゼル達を見ながら訊ねた。
「この人達な、私が変なおっちゃんに絡まれとったん助けてくれてん。」
「そうなんや。妹がえらい世話なったなぁ。おおきに。」
「あ、あぁ…。どう致しまして。」
ゼネアの兄は礼を言いながらザレフの手を取って両手で握手をした。
くどい様だが、助けたのはラゼルだ。
ラゼルは報われない自分に涙した。
「妹が世話になった礼せなアカンなぁ。何したら良ぇ?」
「え?んー…。」
突然言われても直ぐに思い浮かぶ筈が無い。
ましてや、タスマに連れて行ってくれ等と頼んだところで連れて行って貰える訳でも無いだろう。
「そんな考え込まんでも…」
「おー。ヴェグラ。来てたのか」
「あ。おっちゃん!まいどっ!」
会話の最中に恰幅の良い中年の男性が声を掛けて来た。
ゼネアの兄はヴェグラと言う名らしい。
ヴェグラは名を呼ばれると笑顔で挨拶をする。
「悪いがこの荷物をタスマに運んでくれんか?」
「お、良ぇで。せや。おっちゃん宛ての荷物有んねん。後で持って行くわな」
男性はヴェグラに荷物を渡すと、店が有るからと早々と去って行った。
しかし、先程の二人の会話で、ラゼル達の考えは一致した。
ここは礼儀正しいラゼルが交渉する事にした。
「あ、あの、すみません。」
「ん?お礼何にするか決まったんか?」
「はい。あの、僕達をタスマ帝国まで連れて行ってくれませんか?」
それを聞いた瞬間にヴェグラはきょとんとした表情を浮かべた。
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