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ヴェグラのきょとん顔を見ると三人は駄目なのかと言わんばかりに肩を落とした。
「…別に構へんけど…。そんなんで良ぇんか?」
その返事に表情は一変して明るくなった。
「はい!是非お願いします!」
先日は不運続きだったが、今日はついている。三人は今日と言う日とこの兄妹との出会いに感謝をした。
「よっしゃ。ほんなら、俺ちょっと仕事あるからそっち終わらせるな。」
ヴェグラは先程渡された荷物を肩に担いで走り出した。
「船まで案内します。兄の仕事終わるまで、待っといて貰えますか?」
「あぁ。案内頼むよ。」
返事をしたのは勿論ザレフだ。ゼネアに惚れたのか鼻の下を伸ばしてでれでれとした顔をしている。
シュリアに振られたばかりなのに懲りないなと、ラゼルとジューゼは思っていた。
しかし、何も言わずに船へと迎うゼネアの後ろを着いて行った。
「これが私達の船です。」
「え…?」
ゼネアに案内された船は、結構な大きさの貨客船だった。
この立派な船を兄妹二人だけで使っているのかと思うと、三人は少しこの兄妹が腹立たしく思えた。
「こ、これが本当にきみ達の船なのかい?」
信じられずにザレフは思わずゼネアに問い掛けるとゼネアは笑顔で頷いた。
「はい。貰い物なんですけどね。」
こんなでかい船をくれる人、一体何処に居るんだ。
しかし、ゼネアが嘘を吐いている様には見えない。
(本当に貰ったのか…。)
そう思いながら、三人はゼネアに連れられて船に乗り込んだ。
その途中でせっせと荷物を運ぶヴェグラとすれ違った。
手伝った方が良いのだろうかと思いつつ、誰も手伝いには向かわずにその背中を見送った。
甲板に出ると潮風が吹いて来た。
「気持ち良い~。」
ラゼルは深呼吸と共に潮風を吸い込んで呟いた。
「あ、あの、お腹空いてませんか?良かったら、何か作りますけど…。」
「僕食べたいですー!」
「そう言えば、今朝は何も食べてなかった……。」
「じゃあ、お願いして良いかな?」
ゼネアが恥ずかしそうにもじもじとしながら三人に問い掛けると食欲旺盛な野郎達は直ぐ様返事をした。
だが、遠慮をしない三人のその返事をゼネアは喜んで聞き入れた。
「ほんなら、作って来ますんで待ってて下さい。」
ゼネアはペコリと頭を下げるとその場を後にした。
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