天野月子

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聲 たとえば 海の底で あなたが生きてるのなら 私は二本の足を 切って 魚になろう 深みへ落ちるほどに あなたに近づくのなら 私は闇夜を彷徨う 影になっても いい 艶やかに漂う 私の陽炎 叶わない現実に 溺れていただけ あなたはいない わかっている…わかっている 昇る昇る 太陽が 私の場所を浄化する 青く刻む 刻印を 温い温い 風がさらっていく たとえば この言葉が あなたに届くのならば 私の声器を取り上げて 捨ててもいい 艶やかな傷を 失くした現在を なにもかもを奪う あなたの温度を 求めていた…求めていた 幻でも 消える消える 温もりが わたしの場所を連れていく 罰を拭う その腕に 抱かれながら 眠りにつきたい 昇る昇る 太陽が わたしの場所を浄化する 罰を拭う その腕に 抱かれながら 眠りたい 消える消える温もりが わたしの場所を連れていく 青く刻む 刻印を 温い温い風が さらっていく (蝕んでゆく 記憶の破片 わたしを塞ぐ ピアスが足りない 忘れてしまう ぼやけてしまう あなたの聲が雑踏に消える) 蝕んでゆく 抜け落ちてゆく わたしを塞ぐ ピアスが足りない 跡形もなく 忘れてしまうあなたの聲が雑踏になる…
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