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「良い子だねえ。刑事さん、猫ちゃんの名前は何て言うんですか?」
「ハナですよ!!静江さんの長女さん花子さんと同じハナちゃんです!!」
それを聞いた静江さんの目には涙が溢れてきた。ハナの頭を撫でながら、涙が頬を伝っていった。
「そうですか・・。ハナちゃん、良い子だね。良い子だねえ・・・」
すると、ハナもそれに答える様に鳴き声を上げ始めた。
「ニャアアアアアアッ!!」
私達はずっとハナと静江さんのやり取りを、温かい眼差しで眺めていた。
時の許す限り・・・。
「すみません、お邪魔しまして」
「何か事件のお役に立てたか分かりませんが、こちらこそありがとうございました」
鬼塚さんと静江さんが帰り際、玄関で挨拶を交わす。すると音々がハナを直美さんに差し出した。
「良かったら、この猫飼いませんか?」
「音々!?」
私は隣で音々の行動に動揺する。首の念珠を紐解けば、またあの恐ろしい花に戻るかも知れないのに。
「とても可愛い猫ちゃんですけど、アパートは動物を変えないので。そのかわり、またいつでも遊びに来て下さい!!」
その直美さんの一言に私はホッとする。
「それでは、我々はこれで失礼します。どうもありがとうございました!!」
鬼塚さんと渡辺さん、私達4人はお辞儀をするとアパートを後にした。
高速道路の帰りは、すでに薄暗かった。
道路脇の外灯が次々と流れて行く。
ハナは疲れたのか、私の膝元で眠りについていた。きっと今までで一番安らかな眠りについているはずだ。
私はハナの面倒を見続ける事に決めた。
猫のうちは地獄に流す必要は無い。
この可愛い寝顔を見られるうちは。
きっとこれからは幸せになれるよ、ハナ。
幻想と団地の連鎖 完
(次回より、心霊探検記 天海 改めて
チェーンスピリットと題して話しを掲載させていただきます。今までお付き合いありがとうございました)
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