幻想と団地の連鎖

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東京都内。 東京の空もどんよりとして、小雨が静かに降っていた。 新幹線が東京駅に到着すると沙織はたくさんの人混みの中、制服姿で肩かけの長いリュックをお尻にあてホームへ歩き出した。 「東京は人が多いわ」 人の波にまぎれ沙織はスマホを取り出すと、森山愛に連絡を入れた。 「もしもし愛ちゃん?今、駅に着いたとこ。これからそっちに向かうから待ってて」 沙織はそのまま改札を過ぎると、丸の内の方へ向かった。 森山愛は東京駅の丸の内南口付近で、沙織を待っていた。 大きなゼブラ柄のダテメガネにキャップを深々とかぶり、薄めのダウンにデニムのホットパンツとロングブーツといった着こなしをしていた。 今のところ声をかけられる事はないが、愛は時おり周りの視線を気にしていた。 愛にとっては周囲にいる全ての男性が不審者に思えるほど、心境は追い詰められていた。 「愛ちゃん!!」 突然背後からの呼びかけに、彼女は全身を硬直させる。そしてゆっくりと後ろを振り返った。 そこにはイタズラに微笑む沙織の姿があった。 「沙織~!!驚かせないでよ!!ビックリするじゃない!!」 「ごめん、ごめん。愛ちゃん、お久し振り!!」
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