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「ねぇねぇ、沢本さん。今日ね? 本社から副社長が来るんだって!」
それは、私が派遣社員として東條グループの子会社に入社し、二週間が過ぎた頃のことだった。
一階ロビーで一緒に受付をしている同じ派遣会社の小林尚子が、興奮気味に副社長の訪問を告げた。
「副社長?」
意味が分からず、「だから?」とばかりに首を傾げると、一瞬固まった小林さんが「あぁ!」と大きな声をあげた。
「そっか。沢本さんはまだ、副社長に会ったことないんだっけ」
「うん……」
頷くと、今度は力強く両肩を掴まれた。
「惚れるから」
「……えっ」
顔を近づけ真顔でそう言われたものだから、私は反射的に身体を引いてしまう。
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