終わる恋 -side 菜月-

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------------------------- -------------------- 「ねぇねぇ、沢本さん。今日ね? 本社から副社長が来るんだって!」 それは、私が派遣社員として東條グループの子会社に入社し、二週間が過ぎた頃のことだった。 一階ロビーで一緒に受付をしている同じ派遣会社の小林尚子が、興奮気味に副社長の訪問を告げた。 「副社長?」 意味が分からず、「だから?」とばかりに首を傾げると、一瞬固まった小林さんが「あぁ!」と大きな声をあげた。 「そっか。沢本さんはまだ、副社長に会ったことないんだっけ」 「うん……」 頷くと、今度は力強く両肩を掴まれた。 「惚れるから」 「……えっ」 顔を近づけ真顔でそう言われたものだから、私は反射的に身体を引いてしまう。
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