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彼は副社長で、私はただの派遣OL。未来がないことなんか、最初から分かっていた。
ましてや私は本社勤務という華やかな立場ではなく、都心の外れにある“煌びやか”とは無縁の世界で働く、しがないOL。
滅多に訪れることがない副社長と、一言二言会話を交わすチャンスすらないのだ。
もしかすると、今日を逃せば二度と顔を見ることはできないかもしれない。
派遣の契約期間は六ヶ月。
基本的に契約更新はないものだと入社前に聞かされている。
「ねぇ、副社長って、ここによく来るの?」
「え?……あぁ、もしかして沢本さんも、彼に惚れた?」
隣で彼女がニヤニヤ笑っているのが分かって、私はパソコンのキーボードをカタカタと鳴らして誤魔化した。
「だけど、本気にはならない方がいいよ」
「え?」
手を止めて彼女を見ると、今度は真顔で彼女が私を見つめていた。
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